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2010.09.07

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後悔しているわけではないが、後悔した方がいいのかな、と思っていることがある。

私は八年前、彼女と別れたばかりで落ち込んでいた男性に、ある女友達を紹介した。

彼の理想のタイプは、清楚でスレンダーで、派手というよりは上品でかんじのよい顔立ちの美人で、頭の回転が速くてユーモアを解する、少し気が強い女性なのではないかと私は予想していた。それゆえ、その仮説にぴたりと符合する女性を見つけたとき、私はすぐさま彼に紹介せずにはいられなかったのである。

その結果、彼はあっさりと恋に落ちた。

問題は、女友達のほうは、恋に落ちなかったということ。

私はその時点では気づいていなかったのだが、女友達には、いささか変わった点があった。彼女は常に彼氏を欲しがっているし、誰かいい人を紹介して欲しいと友人にしじゅう頼み込んでいるし、恋愛には興味があるようなのだが、その実男性に対しては興味がないのである。

じゃあ女性に興味があるのかというと、そういうわけでもないらしく、彼女の恋愛に対する興味というのは、なんというか、形而上学的なものなのであるように思われた。

恋愛という概念には興味をそそられる部分がある、彼氏という存在がいる状態を一度経験してみたくもある。だが、そういった彼女の思いは、現実に目の前に存在する血と肉を具えた具体的な一個人とは決して結びつくことがない。

たとえば彼女は、合コンから帰ってきて、こんな風にこぼす。

「合コンで知り合った男性から誘われたけど、よく知らない人と二人きりで出かけるなんて、気詰まりだから行きたくない。だいたい、男の人だって、私のことをよく知りもしないはずなのに、どうして一緒に出かけたいのだろう?」

こういった疑問を、彼女は心の底から真剣に呟く。

「それはその男性が、あなたに興味を持っているんだよ。彼はあなたをよく知らないからこそ、これから知り合うために、一緒に出かけたいのだよ」

ある友人が優しくそうさとすと、彼女はぽかんとした顔つきで

「理解できない。あの男の人って、すごく変わった人なんだね。ますます出かけたくなくなった」

と言い、その場で断りの連絡を入れてしまった。

どうやら彼女には、男性の恋心を理解する能力がないらしい。

そんな女友達に恋してしまった彼は、私という友人が仲介したこともあって、他の男たちよりも少しだけ有利なスタートが切れた。彼はすぐに「ただの知人」から「親しい友人」のレベルに昇格した。

だが、事態の進展はそこで終わった。

女友達は彼のことを、良い人間だ、大事な友達だ、親しい仲間だ、と思うようにはなったが、それ以上の気持ちを抱くことは決してなかった。

彼は元々、モテる男だった。イケメンだし、弁舌も爽やか、博識であり、鍛えられた肉体を持つスポーツマンで、気配りは細やかな、気持ちの優しい男だから、モテるのは当然だろう。

裕福な家庭の息子で、一流大から一流企業に進み、とにかく人生すべてが順調に進んできた人間の見本のようなところがあった。

彼にとって、人生で初めての挫折が、女友達への恋だったのかもしれない。

今までの人生、全ての壁を努力して乗り越えてきた彼は、恋ごとにおいてもまた、一心に努力を続けた。すばらしく献身的に彼女に尽くし、彼女の全てに対して、痛々しいほどに惚れ込んた。

一時期の彼は、女友達が歩いた後の地面にすら、ひざまずいてキスをしかねないように見えた。

しかしながら、その努力が実ることはなかった。これからもないだろうと、私は思う。

数年間の絶望的な片思いを経て、彼はついに、その恋を諦めた。気持ちを断ち切るために新しい出会いを求めた彼は、あっという間に様々な女性に好意を寄せられ、その中の一人とつきあい始めることとなった。

一年後、彼は「たまには二人で飲みたい」と言って、私を呼んだ。普段ほとんど酒をたしなまない彼が、その日はしたたかに飲んだ。そして三軒目の店で、絞り出すような声で、囁いた。

「おれ、婚約したんだよ。今年中には、結婚するんだ」

私が祝いの言葉を口にすると、彼はうなずきながら、さらに言葉を続けた。

「結婚するから、もういいんだ。もう諦めたんだ。諦めたからいいんだけど、一つだけ気になるんだ。だからお前を呼んだんだ。第三者のお前の視点なら、わかることもあるだろうと思って」

そこで彼は、涙をこぼしながら、私のほうを見た。

「なんでおれは駄目だったんだろう。あの子はおれの、どこが嫌だったんだろう。あの子がおれを選んでくれなかった理由は、なんだと思う?」

私は何も答えられなかった。そもそもあの女友達は、どんな男だって選んだことがないのだ。そもそも彼女が誰かを選ぶことがあるのか、それすらも謎だった。

そして、彼は結婚した。

問題は、その後のことである。

彼は私を新居に招き、会話の途中で思い出したように付け加えた。

「・・・ああそうだ、お前が来るなら、ついでにあの子を呼ぶのがいいよな。うん、あの子も呼ぼう。呼んでくれ」

私が女友達に電話をかけると話し中で、一時間半後にやっと連絡をとれた彼女からこう言われた。

「ごめん、さっきまで○○くん(彼の名前)と電話で話してた。最近しょっちゅう、電話をかけてくるんだよね」

やがて私は、彼の新妻が私のことを嫌っているらしい、という話を耳にした。

家でも夫は女友達の話ばかりしていて、それが本当に嫌だ。

もしも愛人だというなら、証拠を集めて別れさせることもできるけど、夫は絶望的な片思いを続けているだけだから、何をすることもできない。

こんなことになる原因を作った人間、女友達と夫を引き合わせてしまった人間を、せめて恨みたい、ということらしい。

私は彼の妻と顔を合わせたことはないのだが、たぶんそんなことは関係ないのだろう。

私は彼の家庭が少しずつこじれつつあることの責任が、自分にあるとは思わない。

けれど確かに私が八年前、彼を女友達に引き合わせることがなければ、彼も彼の妻も、今より平穏な結婚生活を送れていたかもしれないとは思う。

責任は私にはない。だから後悔しているというのとは違う。

それでもやっぱり、あんなことしなければよかったと思ってしまう。

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http://anond.hatelabo.jp/20100904160452

人間は未来を予測できない。

そのときにベストと思えることをするだけだよ。

むしろここまでは序章でこの後でもう一つ物語が待っている気がする。

責任を感じるなら、関係者全員にコミュニケーションを欠かさないようにしたほうがいいのかも。


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